HOME>相続>相続税の仕組みと計算方法

相続税の仕組みと計算方法

今回から、皆さんの関心の高い相続税について紹介していくことにしたい。第1回は、相続税の仕組みである。

 

■1.相続税の計算の仕方

相続税の計算は、6段階になる。ちょっとわかりにくいところはあるが、丁寧に読んでいけば、誰でも簡単に計算できるようになるので、じっくり読んでほしい。

➀課税対象額の算出

被相続人の持っていた土地、建物、預金、株式等の相続財産をリストアップし、これに、みなし相続財産と言われる生命保険金や死亡退職金を加える。さらに、相続開始3年以内の法定相続人への贈与を戻し入れる。
ここから、未成年者、障害者、生計を一にしている者1人につき500万円の死亡保険金、国や公益法人への寄付等の非課税財産、葬式費用、債務を差し引く。さらに、ここから基礎控除を引くと、課税対象額が導かれる。
基礎控除については、後で説明するが、2015年1月までは、5000万円+(1000万円×法定相続人数)だったが、現在は、3000万円+(600万円×法定相続人数)と大幅に減額されている。

➁法定相続分に基づく相続額を計算

最終課税対象額を法定相続分通りに配分し、各相続人の法定相続分による相続額を計算する。
そのためには、法定相続人が誰か、各自の相続分はいくらになるのかを知っておく必要があるが、これについては相続の基本のところですでに紹介済みである。

➂各相続人の相続税額を計算

各相続人の相続額が出たら、それを税率のテーブルに当てはめて、各相続人の税額を計算する。相続税の税率表は以下の通りである。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1000万円以下 10% なし
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

④ 相続税合計額を計算

各相続人の相続税額をすべて合計して相続税合計額を算出するプロセス。③の結果の単なる足し算である。

⑤ 相続税合計額を実際の分割割合で按分

相続税合計額を、実際の遺産の分割割合に応じて、各相続人に割り振るプロセス。ここまでは法定相続分を使って計算してきたが、相続税合計額が出たら、各相続人の相続税負担能力(=相続する額)によって相続税額を割り振る。

⑥ 税額控除の最終課税額

各相続人が税額控除の適用を受けられるかどうか(たとえば、配偶者は財産の法定相続分である2分の1か、1億6000万円のどちらか大きい金額まで非課税)を加味して、最終納税額を出すことになる。

 

■相続税計算法の例

ちょっと面倒なプロセスだが、中身は簡単。この後、いくつか例を示すので、相続税計算法に慣れてほしい。

具体例への適用

父の遺産の額が6000万円、家族は妻と2人の子どもであった例を見ていこう。

まず、課税対象額の計算。

基礎控除額は2015年1月以降、3000万円+600万円×3人=4800万円。

① 課税対象額

6000万円-基礎控除額4800万円=1200万円

② 各相続人の法定相続分

妻は 1200万円×1÷2=600万円
子どもは2人だから、各自4分の1 1200万円×1÷4=300万円

③ 各相続人の相続税額

法定相続分は1000万円以下の場合、10%の税率がかかるので、
妻 600万円×10%=60万円
子ども一人あたり 300万円×10%=30万円

④ 相続税合計額

60万円+30万円×2=120万円

⑤ 相続税合計額を実際の分割割合で按分

妻、子ども二人が法定相続分通り、2分の1、4分の1ずつ相続するとすれば、
妻の税額は 120万円÷2=60万円
子どもは 120万円÷4=30万円
この例では、実際の分割割合が法定相続分と同じなので、個別に税額を計算したときも同じになる。この過程は無駄な繰り返しのように見えるが、法定相続分と違う比率で財産をわけると数字が違ってくるので、このプロセスを端折ってはいけない。

⑥ 税額控除後の最終課税額

妻の場合は、相続財産の2分の1または1億6000万円の大きい方まで税額控除となるから、妻の税は0。
子どもは、そのままで、それぞれ30万円の相続税を負担する

この計算を基に、非相続人の住所地を管轄する税務署に相続税を申告・納付して終了する。被相続人の死亡を知った日の翌日から起算して、10か月以内に申告・納付をすませなければならない。

 

■ 相続税増税の内容

相続税は、2015年1月から増税された。
その骨格は、①基礎控除の減額、②最高税率の引き上げの2点におかれている。以下にそれぞれの内容を紹介していこう。

基礎控除の減額

第一の基礎控除の減額の内容は、すでに1でも触れたように、これまで(5000万円+1000万円×相続人数)となっていた基礎控除が、(3000万円+600万円×相続人数)となった。
夫が亡くなって、妻と子ども2人が相続人となる場合には、相続人数は3人だから、以前は5000万円+1000万円×3=8000万円が基礎控除額だった。

これが、2015年1月からは、3000万円+600万円×3=4800万円と実に3200万円縮小。
遺産の額が6000万円である場合、これまでは非課税だったが、2015年1月からは、さっき計算してみたように、合計60万円の課税となったのである。

さっきの具体例でやったものと同じ計算を遺産が1億円であった場合についてしてみよう。まず、これまでの8000万円の非課税枠がある場合。

① 課税対象額

1億円-(5000万円+1000万円×3)=2000万円

② 各相続人の法定相続分

妻 1000万円  子ども500万円

③ 各相続人の相続税額

妻1000万円×10%=100万円
子ども500万円×10%=50万円

④ 相続税合計額

100万円+50万円×2=200万円

⑤ 相続税合計額を分割割合に応じて按分

妻 200万円×1÷2=100万円
子ども  200万ね×1÷4=50万円

⑥ 税額控除後の最終課税額

妻    0円
子ども  50万円

 

現在は

これが、現在では、次のようになった。

① 課税対象額

1億円-(3000万円+600万円×3)=5200万円

② 各相続人の法定相続分

妻 2600万円、子ども 1300万円

③ 各相続人の相続税額

妻 2600万円×15%-50万円=340万円(相続分1000万円超3000万円以下の場合の税率は15%で、控除額は50万円)
子ども 1300万円×15%-50万円=145万円

④ 相続税合計額

340万円+145万円×2=630万円

⑤ 相続税合計額を分割割合に応じて按分

妻   630万円×1÷2=315万円
子ども  630万円×1÷4=157.5万円

⑥ 最終課税額

妻       0円
子ども  157.5万円

子ども2人分で315万円-100万円=215万円の負担増となったのである。これが、後で述べる相続税節税ブームの原因となっている。

最高税率の引き上げ

最高税率の引き上げとは、これまで最高50%だった税率が55%に引き上げられたこと。
より正確には、先ほど紹介した表にあるように、法定相続分に基づく各相続人の取得金額が1億円以上については、これまで2段階であった税率が4段階に細分化され、税率があげられたことをいう。
かなり高額の遺産がある場合に適用になるので、影響を受ける人は意外に少ない。

■相続税増税の影響

増税前の平成26年には、課税対象となった死亡者数は5.6万人、死亡者総数の4.4%程度だった。
2015年1月から行われた増税により、この数が7万人程度になり、死亡者総数に占める割合は6%程度に増え、相続税が3000億円程度増税になったと言われている。主な要因は基礎控除の削減だ。
東京においては不動産価格の上昇と相まって、さらに増税対象者が増える。被相続人の2分の1が納税対象者になると予想されている。

増税シミュレーション

相続税の計算プロセスがわかったところで、それを利用して、モデルケースの相続税額を見てみよう。これによって、実際にどれぐらい税金が増えるかがよくわかるはずだ

課税価格 2015年1月前 2015年1月以降
1億円 100万円 315万円
2億円 950万円 1350万円
3億円 2300万円 2860万円
4億円 4050万円 4610万円
5億円 5850万円 6555万円

この表を見ていただければ、増税のインパクトがいかに大きいかわかるはず。

配偶者と子ども2人のケース

1億円の相続財産があったとした場合、2015年1月以前の税制なら税額合計は100万円。これが現在は315万円と、215万円跳ね上がった。
2億円の相続財産の場合だと、2015年1月以前の税制なら税額合計950万円、現在は1350万円と400万円増。

配偶者がすでに亡くなっている子ども2人のケースでは、もっと増税のインパクトが高まる。その理由は、後でも述べるように、配偶者控除が使えないからだ。

1億円の相続財産の場合、2015年1月以前なら350万円。これが現在は770万円となった。
2億円の相続財産の場合、2015年1月以前なら2500万円が、現在は3340万円。実に840万円増。

こうして数字だけ見ていると、相続財産が巨額だから、払えるじゃないかと、ついつい思ってしまう。しかし、現実にはそう簡単ではない。
これまでも、何度も言ってきたように、相続財産の主なものは不動産。売れない限り、現金で相続税を払えない。物納という方法も考えられるが、それにはいろいろと制限がある。国だって換価に困るようなものはもらってくれない。
相続財産が不動産ばかりで換価に困るようなものであるときは、結局、相続人が自分のポケットから、現金を出さざるを得なくなる。でも、いきなり現金で数百万円、数千万円の負担は重すぎて、簡単に支払えるものではないのである。

©2017 青山東京法律事務所.
ページトップへ