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相続財産の範囲とは?

相続財産と言えば、漠然と亡くなった夫の持っていた財産すべてを想像する。
そして、財産というと、なんとなくプラスのものだけを考えるが、実はマイナスのもの、つまり、借金も含まれている。
今回は、相続財産がどこまでを含むのかを正確に理解していこう。

 

■1.相続財産の範囲

法律の規定によれば、「被相続人に属した一切の権利義務」が相続財産。
ただし、「被相続人の一身に専属する権利義務」は除外される。一身に専属する権利とは、親族間の扶養請求権、離婚に伴う財産分与請求権、生活保護法による保護受給権などをいう。
それ以外の権利義務はすべて相続財産となるのだから、家や土地などの不動産、車や宝石や株式などの動産、預金や売買代金支払い請求権や損害賠償請求権などの債権、著作権や特許権などの知的財産権、現金等々ほとんどすべてのものが相続の対象となる。

すでに述べたが、負債も当然これに含まれるから要注意。相続はプラスの財産を相続するだけでなく、マイナスの財産も相続する。
銀行からの住宅ローン、クレジットカード会社からの借入、サラ金会社からの借入等がこれに当たる。

特に怖いのが連帯保証だ。重要なのでさらに説明を加えておこう。
保証債務も、被相続人の債務だから、「原則として」相続される。
「原則として」と言うのは、例外もあるからだ。
将来にわたる継続的取引の連帯保証(いわゆる根保証)については、被相続人の死亡後に生じた債務については相続されない。この場合には、被相続人の死亡時に保証額が確定される。

また、身元保証(企業に入社する際に求められるもの)についても、「原則として」相続されることはない。ここで「原則として」というのは、生前にトラブルがあり、具体的に損害賠償債務が発生している場合には、さらにこの例外となって相続されることになる。

では、連帯保証についてはどうか。連帯保証とは、主たる債務者と同順位で債務返済の義務を負う者のことをいう。多くの皆さんは、連帯保証は、主たる債務者が返せないときに返済を迫られると思っているが、法律上は、債権者は、主たる債務者にも連帯保証人にも同時に請求できるのである。

この本を読んでいる皆さんは、「うちの夫はそんなことはしていないはず」と思っているだろう。しかし、連帯保証は意外に身近にあるものだ。
兄弟が住宅ローンを借りるときに、保証を頼まれる。甥や姪がアパートを借りるときに保証人になる等、親戚から頼まれることが多い。

そして、日本人は意外と簡単に押印をしてしまう。それが債務を承認したという意味を持つ。いったんハンコを押したら、それを後で取り消すことはできない。
夫に連帯保証債務があり、相続人が複数いた場合に、各相続人は法定相続分に応じて分割された債務を相続することになる。その額の限度で他の連帯保証人と連帯して責任を負う。
具体的には、1000万円の連帯保証債務を2人で相続すれば、各自500万円を限度として連帯保証債務を負うことになる。

 

■2.民法上の相続財産と税法上の相続財産

民法では、死亡時に被相続人本人に帰属していた一切の財産(権利義務)を相続財産という。一般的には遺産と呼ばれている。
民法上の相続財産に当たる場合には、遺産分割の対象となり、後で詳しく解説する遺留分の計算対象にも加えられる。
一方、税法上の相続財産に当たると、課税対象となる。その財産について支出された費用があれば、それが課税対象から差し引けることになるので、税負担は軽減される。

相続財産は、1で述べたように、被相続人の死亡により被相続人から相続人に自動的に移転する。
生命保険金や死亡退職金は、被相続人の財産ではなく、被相続人の死亡によってはじめて生じるものだから、民法上の相続財産には当たらない。
しかし、税法の扱いは違う。この生命保険金や死亡退職金は、被相続人の死亡によって相続人等が取得する財産なので、これを相続税の対象とする。これをみなし相続財産という。

(1)生命保険金

被相続人の死亡により相続人が生命保険金を受け取る場合。
保険金を受け取る権利は、生命保険契約に従い、受取人にポッと生じるので、被相続人の民法上の財産ではない。
しかし、その生命保険金の保険料を被相続人が負担していた場合には、実質的には、被相続人の財産が死亡によって相続人に移転したといってよい。
だから、税法上は、相続財産とみなされる。(相続税法3条1項の1)つまり、みなし相続財産である。

これが税法の規定だが、生命保険金がどう取り扱われるかは、契約者、被保険者、受取人の組み合わせのパターンにより決まってくる。

 

契約者 被保険者 受取人 税法上の取扱
被相続人 被相続人 相続人 相続税
相続人 被相続人 相続人 所得税(一時所得)
第三者 被相続人 相続人 贈与税

 

第一に、契約者と被保険者が被相続人、受取人が相続人の場合。この場合、受取人が特定の相続人に指定されているので、保険金は、民法上、その人の固有財産になる。
しかし、保険料は契約者が負担しているので、保険金は、契約書である被相続人から受取人である相続人に、死亡時に贈与されたものとして扱われる。この結果、生命保険金は、税法上は相続財産として扱われる。

生命保険金は、4000万円とか5000万円とか結構大きな金額となる場合もあるので、税法上の相続財産が大幅に増えることになる。
現在では、(法定相続人数×500万円)まで相続税を非課税とする特例があるので、それを超えた部分のみが課税対象。4000万円の保険金が下りても、相続人が3人いれば1500万円を差し引いた2500万円だけが相続財産に入ってくるというわけだ。

第二に、契約者と受取人が相続人、被保険者が被相続人の場合。この場合は、相続人が保険料を出しているのだから、自分が負担して保険金をもらったのだから、相続財産には入ってこない。保険金は相続人の一時所得となるだけで、相続税とは一切関係がない。
最近では、保険会社が、被保険者=被相続人が相続人に保険料相当額を毎年贈与して、相続人がこれを保険料として支出するという仕組みを盛んに提案している。
この仕組みに乗れば、相続税の課税対象とならず、相続人は一時所得として税を負担する。一時所得となると、支払った保険料と特別控除額の50万円を差し引いたものの2分の1だけが所得となるだけなので、税負担はかなり軽くて済むことになる。

第三に、契約者が第三者、被保険者が被相続人、受取人が相続人という場合。この場合は、保険料を払っている第三者から受取人への贈与となり、贈与税の対象になる。この場合も、相続財産には入ってこない。
つまり、生命保険金が相続と関係してくるのは、第一の場合。すなわち、契約者と被保険者が被相続人、受取人が相続人の場合だけということになる。

(2)死亡退職金

退職金が、被相続人の死亡により相続人等に支給される場合、被相続人が亡くなる前に持っていたものではないので、民法上の相続財産ではない。
しかし、その支給が死亡後3年以内に確定した退職金等なら、税法上、それは相続又は遺贈により取得したものとみなされる。お金に限らず物や権利にも課税される。(相続税法3条1項の2)なお、3年以内に確定しなかったものは、それをもらう人の所得税の対象となる。
死亡退職金は相続人等に直接支給されるものだが、退職金自体元々は被相続人が将来退職時に取得する財産で、実質的には被相続人の死亡により相続人等に移転したもの。だから、みなし相続財産として取り扱われる。
この死亡退職金についても、生命保険の場合と同じように非課税限度額が定められており、(法定相続人の数×500万円)を超える部分が相続税の対象となる。

(3)祭祀財産と香典

祭祀財産、つまり仏具、位牌、お墓、お骨は、民法上は「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」とされ、他の相続財産とは別の扱い。税法上も、課税対象から外されている。
香典や弔慰金ついては、葬儀の主催者である喪主に対して贈られたもので、民法上、相続財産には入らないとされる。
香典返しの費用も相続財産の負担とはならない。この取り扱いは税法も同じで、税の対象とはならない。
ところが、葬儀費用については、民法上は相続財産とはならないが、税法上は相続財産の負担になるとして、相続財産から葬儀費用を差し引いてよいとされている。
ただし、葬儀後の四十九日、一回忌、三回忌等の供養料は、相続財産から差し引くことはできず、法要の主催者の負担となるは要注意。この扱いは民法上も税法上も同じである。

(4)遺族年金・遺族扶助料

遺族年金・遺族扶助料とは、会社員や公務員などで公的年金に加入している者が死亡したときに、遺族に対して支払われるもの。
これらの給付金は、それぞれの法律によって受取人が決められている。だから、その受取人自身の権利として認められる。
したがって、民法上も相続税上も、相続財産には入らない。

遺族年金がいくら出るかは、夫死亡後の妻の生活にとって重要な問題なので、どれぐらいの金額がもらえるのかを紹介しておこう。
厚生労働省の試算によれば、モデル年金受給世帯の年金は、夫の老齢基礎年金6.7万円、妻の老齢基礎年金6.7万円、これに老齢厚生年金10.4万円を加えた23.8万円。
夫が死亡すると、夫の報酬比例部分の7割が妻へ受給されることになる。モデルケースでいうと、妻の老齢基礎年金6.7万円と遺族厚生年金7.8万円の合計14.5万円となるそうだ。
各家庭によって年金の受給金額も大きく異なるので、年金定期便を見て、必要なら年金機構に電話して、夫死亡後の自分の年金額を確認しておくことは妻の生活設計のために必要だ。

(5)損害賠償請求権

もし夫が交通事故で死んだ場合には、夫は加害者に対して損害賠償請求権を取得している。そして、その損害賠償請求権は相続財産となる。
即死の場合も同じで、被害者が瞬時に損害賠償請求権を取得し、それが相続されると考えられている。
慰謝料も同様。慰謝料には一身専属性(その人にのみ帰属するということ)があるので相続財産とならないように思われるが、被相続人の慰謝料請求権も金銭債権となっているから、その金銭債権自体には一身専属性はないとされる。したがって、相続の対象となる。
この扱いは民法上も相続税法上も同じである。

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