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節税の基本:贈与の6つのパターン

今回からしばらくは、増税でより重くなった相続税を少しでも削減できる節税策を紹介していく。まずは、基本的な節税策から見ていこう。

 

■1.妻への自宅の贈与

婚姻して20年以上たった妻へ、夫は自分たちが住むための不動産を2000万円まで非課税で贈与できる特例がある。これに毎年110万円までの贈与の基礎控除を合わせれば、2110万円まで非課税で贈与をすることができる。
夫婦に子ども2人、夫の財産が不動産4000万円、預金2000万円の場合を考えてみよう。
夫がすべての財産を所有している場合でも、夫が先に亡くなれば、同居している妻は小規模宅地の特例で不動産を80%減額で取得できることになる。不動産の相続税評価は4000万円×20%=800万円となる。
この結果、相続財産の課税標準額は、2800万円となり、基礎控除3000万円+600万円×3=4800万円以内になる。つまり、相続税は生じない。
それなら、わざわざ不動産取得税や登記費用をかけて2110万円まで不動産を贈与する必要がないような気もする。

ところが、妻が先に亡くなった場合はどうなるか。
亡くなる前に、夫が妻に2110万円分の不動産を贈与していたとする。その場合、夫は相続を放棄し、妻から2人の子へ相続が行われることになるだろう。
妻に2110万円の不動産の贈与が行われていた場合、基礎控除4800万円の範囲内となるから、子どもは非課税で相続ができる。

そして、その後夫が亡くなった場合は、夫の財産は6000万円から2110万円を引いた3890万円だから、基礎控除4200万円の範囲内に収まり非課税だ。
もし、妻への2110万円までの不動産の贈与が行われていなければ、夫の6000万円の財産を子ども2人が相続しなければならなくなる。この場合には、基礎控除4200万円を引いた1800万円分に相続税がかかってくることになる。

このように、どっちが先に死ぬかわからない世界では、妻への2110万円までの贈与は極めて有効だ。

 

■2.生命保険

生命保険金については、法定相続人一人につき500万円の非課税枠がある。
生命保険というと、年をとってからでは入れないのではないかと思ってしまうが、いくつかの保険会社は、相続税対策用に90歳まで加入できる保険を用意している。
これに入って、被相続人が亡くなったときに、配偶者や子ども一人につき500万円の保険金が出るようにしておけば、その金額は非課税だ。500万円あると、葬式代も十分カバーできる。
一時は、この非課税枠はなくなると言われていたが、保険会社のロビー活動により存続。今後も、この制度がなくならないかについては、注意して見守っていこう。

 

■3.小規模宅地の特例

小規模宅地等の特例とは、自宅の土地や、自分の営む会社の社屋などが立っている土地、アパートや駐車場経営を行っている土地について、相続税評価額を50%、または、80%減額できるという制度だ。
土地の種類によって、330平方メートル、400平方メートル、200平方メートルまでがこの減額の対象となる。

小規模宅地の特例

宅地の種類 限度面積 限度面積
特定居住用宅地等 330㎡ 80%
特定事業用宅地等 400㎡ 80%
特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

 

遺産の大きな部分を占めるのは何といっても土地だから、その土地の80%減額を受けることができれば、相続税が発生しなくなるか、かなり小さくなる。
上記のうちの特定居住用宅地等に当てはまる条件は以下の通りである。

➀被相続人と同居している配偶者がその土地を取得した場合
➁被相続人と同居している親族がその土地を取得した場合で、相続税の申告期限までその土地を保有し、且つ、居住している場合
➂被相続人と同居していない親族が、その土地を取得した場合で、被相続人に配偶者や同居していた親族がいない、且つ、相続開始前3年以内に自己または自己の配偶者の所有する家屋に居住していない、且つ、その土地を相続税の申告期限まで保有している場合

この条件を満たせば、330平方メートルまで80%減額の適用が受けられる。

二世帯住宅については、建物内部で行き来ができない場合でも同居とみなされるようになったが、区分所有登記がなされていないことが条件となっている。
また、アパートや駐車場の土地など貸付事業用宅地等を相続する場合にも、200平方メートルまで50%の減額が認められる。

ここで、問題となるのが、老人ホームへ入居した場合。
一時、有料老人ホームの終身利用権を取得した場合は、生活の拠点を有料老人ホームに移転してしまったと解釈され、小規模宅地の特例が受けられなくなったが、平成26年1月からは、以下の条件のもとに小規模宅地の特例が受けられるようになった。

(1)被相続人に介護が必要なため入所したものであること
(2)その家屋が貸付け等の用途に供されていないこと(生計一親族が使用貸借で居住したときは適用可。事業用や生計別親族の居住用としたときは適用不可。)

こうして適用は緩和されたが、それでも、介護を受ける必要があるほど悪くならない限り、おちおち老人ホームには入れないというわけだ。

 

■4.生活費・教育費の負担

もう一つの節税策は、生活費や教育費や医療費に困っている子どもや孫がいたら、それを親がサポートしてあげること。
子や孫の大学進学の費用、海外留学の費用、医療費用を親が出しても、それは親族間の扶養義務の範囲内の支払いとみなされる。
経済的に余裕のある親なら、こうして子や孫をサポートしてあげれば、将来感謝されること間違いなし。税金もかからないのだから、一番いい財産移転の方法だ。
また、この方法は、その都度、お金を出していくことになるので、後で「贈与しすぎたな」と後悔することはない。毎回、贈与するので、感謝される回数も増える。一石二鳥のやり方である。

 

■5.暦年贈与

生前贈与とは、生きているうちに子ども等の相続人やその他の人に財産を与えることをいう。
二つの種類があって、一般贈与と相続時精算課税。
まず、一般贈与だが、毎年1人当たり基礎控除の110万円まで非課税である。ただし、これを超えると税率は、やや重くなってくる。2015年1月以降、親から子や孫への場合には軽減され、表のようになった。

特例贈与財産の贈与税の税率

区分 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1000万円以下 1500万円以下 3000万円以下 4500万円以下 4500万円超
特例税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

 

毎年110万円しかできないとすると、節税効果は知れていると思われるが、それでも10年間続ければ1100万円。これを子ども2人にやれば、2200万円。相当大きな節税効果が表れることになる。
ただ、注意しておかなければいけないのは、親が子の名義の預金を作って、そこに入金しておいたが、通帳の管理は親が行っていたという場合には、子どもへの贈与は認められないこと。これを名義預金という。名義だけで、実質は親が使えるようになっていたから、贈与とは認められないということだ。
子どもに贈与をするなら、子どもが管理している口座へ振り込むことが必要。ということは、本当にお金を子どもが自由に使ってしまっても仕方がないという覚悟がいる。後で返してくれとは言えなくなってしまうということだ。
それから、もう一つ注意しておかなければならないのが、被相続人の死亡前3年間の贈与は、相続財産の一部となるということ。せっかく生前贈与をしてきても、被相続人が3年以内に亡くなってしまうと相続税の対象になる。

贈与は誰にでも行うことができる。何も子どもにやる必要はなく、一代飛ばして、孫にやってもよい。そうすれば、親から子、子から孫というステップを一つ飛ばすことができ、節税対策にもなる。
その上、子どもが生きている限り孫は法定相続人ではないので、3年間の贈与が相続財産に戻し入れられるという心配もないから、相続税はかからない。
ただ、この場合にも名義預金はダメ、渡したものは孫が何に使っても文句が言えないことには、十分注意しておこう。

 

■6.教育資金贈与、住宅資金贈与、結婚・子育て資金贈与

教育資金贈与は、2013年4月から限度額1500万円まで、住宅資金贈与と結婚・子育て資金贈与は、2015年1月から、前者については1200万円まで(ただし、時期と住宅の質によって上限額は変わる)、後者については、1000万円までの子や孫への贈与が認められている。ただし、いずれの制度も時限措置で2019年3月には終了することになっている。

信託銀行が専用口座の開設をアピールし、多くの方が利用しているようであるが、一旦贈与すると取り消すことができない。後で親が病気等により生活費が足りなくなった、子や孫が期待するような進学をしなくなったとしても、取り戻すことができないのが玉に瑕(きず)である。
また、一旦贈与してしまうと、完全に子や孫のものとなってしまうために、子や孫はありがた味を忘れてしまうという弊害も指摘されている。
4で述べたように、生活費や教育費なら、その都度負担するという方法もあるので、信託銀行の勧めに乗って、安易にお金を贈与してしまうことのないよう注意したい。

©2017 青山東京法律事務所.
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