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事業承継とM&A

しばらく前までは、M&Aは日本の中小企業にとっては縁遠いものと思われていたが、昨今では、日常茶飯事のように取引が行われる。
その仲介の最大手である日本M&Aセンターという会社は、売上が大きく伸び、平成29年3月決算では190億円。
ダイヤモンドとかに出てくる東京証券取引所上場企業の社員一人あたり給与は1400万円。ランキングではトップ10に入ってくる。
いかに中小企業のM&Aが増えているのか、その収益性が高いのかがよくわかる。

 

1.M&Aが盛んになった理由

何故、そうなっているかというと、その理由は簡単だ。
中小企業の社長さんの平均年齢が65歳を超えてきており、その中には自分の子どもは別の道を歩んでいて、ついでもらえない人がたくさんいる。では、社員の中からめぼしい人に頼んだらよいと思うが、それまで社長の後をついてきただけのサラリーマンにとても社長が務まるはずもない。中小企業の社長になると、個人保証をしなければならないことも社員が経営を引き継ぎたがらない理由だ。そこで、第三者に株式を買ってもらって、経営を引き継いでもらった方がよいということになる。

2.M&Aによる株式売却のメリット

株式の売却は、引退していく社長さんにとっては最高の出口だ。なぜなら、株式売却の場合の税金は20%。
会社のお金を社長個人のお金にする方法は、給与で出すか、退職金で出すか、配当するかの3通り。
利益を給与で引き出したら、総合課税となり高い所得税の税率がかかる。最高税率に引っかかるような金額になると、所得税45%に住民税10%だから、全部で55%を税金に持って行かれる。
退職金で会社のお金を引き出せば、20年以上勤めていた場合、800万円+70万円×(勤続年数-20年)の退職金所得控除がある上、残りの金額の半分にしか所得税は課税されない。税率は大幅に抑えられるが、経営を引き継いでくれる人が見つからない限り、退職することもできないのだから、これは絵に描いた餅である。

配当金の場合は、未上場の中小企業なら、やはり総合課税となってしまうので、給与で引き出した場合と同じ。高い所得税と住民税の適用を受ける。
だから、株式譲渡での20%の課税がおいしいのである。
また、買い取ってくれる会社が大手だったりすると、個人保証もすんなりと外れる。相手が中小で信用力がイマイチの場合には、こうはいかないが、相手が信用力のある規模の大きな会社だと銀行も文句を言わない。これで肩の荷が下りるというわけだ。

 

3.買い手候補

株式譲渡がいくらおいしいと言っても、相手がいなければ始まらない。どこに株式を買い取ってくれる相手がいるのだろうか。
第一に、取引先だ。自分の会社のお客様、つまり、販売先があなたの会社を手に入れて、あなたの会社が作っている製品、サービスを内製化しようとうする場合がある。私も事業再生がらみ、つまり、会社の経営がおかしくなって誰かに引き受けてもらいたいというケースで、取引先に会社を買い取ってもらったことがある。これなら、社長が知っている取引先の会社に声をかければよいので、一番やりやすいのではないだろうか。

第二は、競合他社。自分の会社と同じ仕事をしている会社なら、あなたの会社を手に入れれば規模を拡大できるので、規模の経済を働かせることができる。また、仕入れ業者への力が強くなるから、値引きを拡大することもできる。

この場合も、社長は自分の会社と同じ仕事をしている会社、競合している会社をよく知っているので、人間関係さえよければ、自分で直接声をかければよい。しかし、全国にある競合他社を知っているわけもないので、誰かにちゃんと探してもらう必要があるだろう。
第三に、ファンド。皆さんには、あまりなじみがないかも知れないが、投資ファンドというものがあって、皆さんの会社を買い取ってくれる場合もある。こうした投資ファンドは、銀行や保険や年金等からお金を集めていて、皆さんの会社を買い取るのは、将来転売して利益を得るためである。だから、一生株主でいてくれるわけではない。また、いつかどこかに売られてしまうのである。
それでも皆さんにとってみれば、株式を売り抜けることができるので、効果は同じである。おそらく皆さんは投資ファンドに人に知り合いはいないと思うので、こうした先を探す場合は、仲介業者に頼ることになるだろう。

 

4.仲介会社

買い手候補先が、皆さんのよく知っている会社なら、直接アプローチするのも一つの方法だ。でも、いきなり株式を買い取ってくれませんかとは言いにくいのなら、誰かを間に挟んだ方がよいだろう。
そこで登場してくるのが、M&Aの仲介会社だ。最初に触れた日本M&Aセンターが最大手だが、それ以外にストライク、M&Aキャピタルパートナーズ等の上場会社がある。他にも、小さなM&A仲介会社、個人営業でM&Aをやっている人がいる。
あなたの頭の中にも適当な先がみつからない、自分の会社に興味を持ってくれる人を探すのが大仕事だと思っているのなら、規模の大きい仲介会社に頼んだ方がよい。なぜなら、規模の大きいところはそれだけ多くの銀行や企業との関係を持っているので、色々な買い手候補を探してきてくれるからである。一人でやっているところ、5,6人でやっているところに話を持って行っても、買い手候補を探してもらえる可能性は低い。
次に、思いつくのは取引銀行。あなたも、会社で付き合っている銀行からM&Aの話を聞いたことがあるのではないだろうか。最近は銀行も利ザヤだけでは儲けることができなくなったので、M&Aのような手数料の入るビジネスを強化しようとしている。しかし、しょせん銀行内のネットワークの中で、買い手を募ってくれるだけだから、買い手が見つかる可能性は小さい。
会社の株式を売りたいが、思い当たる先がないという場合なら、やはり、専門の仲介業者に頼むべきなのであろう。

 

5.M&Aのプロセス

あなたの会社が仲介会社を起用し、3か月後に、興味を持ってくれた会社が現れたとしよう。
さあ、ここからどういうプロセスでM&Aが進められていくのであろうか。ここでは、仲介会社を雇った場合を想定して解説をしていこう。

1:売り手企業と仲介会社の仲介契約の締結
2:売り手企業から仲介会社への会社資料提供
3:仲介会社のよる企業価値の評価
4:売り手企業と仲介会社による買い手候補先の選定
5:仲介会社によるノンネーム企業概要書の作成
6:仲介会社によるノンネーム企業概要書の買い手候補先への提示
7:仲介会社と買い手候補先との秘密保持契約の締結
8:仲介会社から買い手候補先への詳細企業概要書の提示
9:仲介会社から買い手候補先への詳細資料の提出
10:売り手企業と買い手企業のトップ面談
11:買収価格等の条件交渉
12:基本合意契約の調印
13:買収監査(デューディリジェンス、略してDDという)
14:最終条件交渉
15:最終契約の締結、決済等

ざっとこんな感じでプロセスが進んでいく。時間がどれぐらいかかるかを知りたいところだが、相手によって千差万別。まさに、ケース・バイ・ケース。3か月で終わるものもあれば、2年経っても終わらないものもある。
こういうと相手方の事情次第のように聞こえるが、実は、原因はあなただったりする。
なぜなら、あなたにとっても一生かけて作り上げてきて会社の売却、まさに、人生の一大事。優柔不断になり、時間がかかってしまうということもあるから注意したい。
一生に一回あるかないかのことなので、誰しも経験がなく慎重になってしまうものだが、あまりに慎重になりすぎるとまとまるものもまとまらなくなってしまうので、スピード重視を心がけたいものである。

6.買い手にとって大事なM&A後の統合作業

会社を売る方は、売ってしまえば終わりだ。
しかし、買った方はそうはいかない。M&Aの成否は統合後の統合作業にかかってくるので、むしろ、ここからが正念場となる。
買い手が買いっぱなしで何もしなければ、自ずとその会社のパフォーマンスは落ちてくる。ぐいぐいと会社を引っ張ってきた社長がやめてしまうのだから、やむを得ない。
買った方の会社は、社長を派遣し、自分のスタイルで経営を行い、自分の事業とのシナジーを追求し早急に統合化することが重要だ。これをしないのであれば、何のために買ったのかということになってしまう。

以上が、M&Aの進め方だ。事業承継においてM&Aが使われることは当たり前になってきているので、事業承継を考えている方は、選択肢の一つとして考えておく必要があろう。

©2017 青山東京法律事務所.
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