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非上場会社の株価評価方法変更

業承継とは、前経営者から次期経営者への経営権の引継ぎだ。経営ノウハウ、取引先との関係、社内での立場等々の引継ぎが重要であることは言うまでもないが、法律的に重要なのは、経営している会社の株式を引継ぎ、つまり、会社の支配権を握ることである。業績がいい会社、利益をため込んできた会社においては、自己資本が厚くなり、その結果として、株価が高くなっているから、それを如何にして引き下げ、現経営者から承継者への株式譲渡をスムーズに‐いかにして税金を節約して行うかが大事なポイントになる。

平成29年6月に国税庁から平成29年度の税制改正の内容が発表された。それは、平成29年1月1日以後に発生した相続や遺贈又は贈与によって取得した非上場株式の評価方法に関わる類似業種比準方式についてのもの。財産評価基本通達の改正であるから、相続、遺贈、贈与のみでなく、株式の第三者への譲渡にも影響を与えることになる。
今回の改正は、非上場会社の株式の株価評価に大きな影響を与えるもの、引いては、次期経営者が株式を引き継ぐ際の金銭的負担に多大な負担を与えるものなので、その内容を詳しく紹介していこう。

 

■1.非上場会社の株価評価の仕組み

最初に、非上場会社の株価評価がどのように行われるのかおさらいをしておこう。
非上場会社の株式を譲渡する場合、取得者によって評価方法が変わってくる。経営者から同族の配偶者や子への相続、遺贈、贈与である場合には、原則的評価方式を採用することになる。
原則的評価方式とは、会社の規模によって会社を大会社、中会社、小会社と分類して、類似業種比準方式と純資産価額方式をミックスさせて株価を算定する方式である。

会社規模評価方式備考
大会社類似業種比準価額純資産価額でもよい
中会社の大類似業種比準価額×90%+純資産価額×10%純資産価額でもよい
中会社の中類似業種比準価額×75%+純資産価額×25%純資産価額でもよい
中会社の小類似業種比準価額×60%+純資産価額×40%純資産価額でもよい
小会社純資産価額類似業種比準価額×50%+純資産価額×50%でもよい

上記を見ればわかるように、類似業種比準価額の使用頻度、使用される場合のウエイトが高いので、その変更が非上場株式の株価の算定に与える影響は大きい。
尚、非上場株式の第三者への譲渡の場合には、それぞれの当事者がDCF法(将来のキャッシュフローを現在価値に割り戻したもの)、純資産価額法、類似業種比準価額法、上記の折衷法等を用いて株価算定を行い、当事者間の協議によって譲渡価格に合意することになる-いわばマーケットプライスが形成される-ので、基本的には、合意された価格で株式の譲渡が行われば、その後それが税務上問題となることはない。その点で、類似業種比準価額方式の計算方式の変更が与える影響は小さい。

 

■2.今回の改正内容

今回の類似業種比準価額の計算方法に関わる改正は、平成29年1月1日以降に発生した相続、遺贈、贈与に適用されるものであり、次の3点に分かれている。
まず、第一に類似業種の株価について、財産評価基本通達182に、課税時期の属する月以前2年間平均したものが追加されることとなった。
これは、これまで類似業種の株価は、課税時期の前月、前々月、前々月の前月、前年の4つと定められていたものに、もう一つの選択肢を追加したものである。
第二は、類似業種の1株当たりの配当金額、利益金額並びに簿価純資産価額について、従来は業種目別に上場会社単体の決算に基づき算出されていたものを、親会社及び子会社を含めた連結決算を基に算出された簿価純資産価額を採用することとなったことである。
そして、第三に-ここが一番のポイントだが-類似業種比準方式の計算基礎となる「配当金額」、「利益金額」、「簿価純資産価額」の割合を「1:3:1」から「1:1:1」に見直すことになった。

つまり、利益金額のウエイトを大幅に下げたのである。これを数式で示せば、以下のようになる。

Stock valuation of unlisted companies_1

上記の式の©/Cのウエイトが、以前は3倍あったものを、1倍に変えたのである。つまり、旧方式だと、単年度利益を操作することで、比較的容易に株価操作を行うことができたが、その悪弊を断つためにこのような改正が行われたのである。

 

■3.改正の影響

類似業種の株価に課税時期の属する月以前2年間平均した株価が加わったことで、従来は相続発生時期に応じて採用できる類似業種の株価(A)が反映される期間に最大で約1年間の誤差が生じていた点が修正された。

すなわち、平成28年12月に相続等が生じた場合は平成27年1月~12月と平成28年9月、10月、11月の株価しか使用することができたのに対して、平成29年1月に相続等が生じた場合には平成28年1月~12月と平成29年10月、11月、12月の株価しか使用することができなかった。たった1か月の差で、平成27年の株価を使用することができるか、否かが決まり、大きな不均衡となっていたのである。
この改正によって、比準要素の標本となっている上場会社の一時的に急激な業績及び株価の変動による非上場会社の株価への影響などを緩和し、平準化された株価を採用できる効果が期待できるようになったのである。

二つ目の改正点である、比準要素である配当金額(B)・利益金額(C)・簿価純資産価額(D)に連結決算の数字を使うようになったことで、一般的に単体決算よりも連結決算による利益金額の方が大きくなる傾向があることから、B、C、Dの比準要素が大きくなることが予想される。

類似業種比準方式の算式中の評価対象会社と各比準要素の割合における分母が大きくなることから、結果的に算出される株価は小さくなる場合が多いと考えられる。

そして、三つ目の改正点は、比準要素の割合のうち利益金額の割合が「3」から「1」となり、三つの要素の比が「1:1:1」に変更されたことである。
利益金額は、役員退職金の支給や設備投資を行うことで圧縮することができるので、比較的調整しやすい要素である。
他の2要素を見ると、配当金額は、簡単に操作できるものであるが、中小企業においては、配当をされていないケースが多く、その点で操作の余地が少ない。3つ目の要素である純資産価額は、過去の利益の積み上げでできたものであるから、一番操作しにくい。

だからこそ、これまでの税理士が勧める相続対策では、利益額の操作を行い、それによって、株価を低下させることが行われていたのである。
今回の改正により、今後は利益の引き下げによる節税効果は薄まることとなる。意図的な株価の引き下げは困難となり、それぞれの会社の実力値に基づいた株式評価をせざるを得なくなる。
書店に置いてある相続税対策の本を見ると、類似業種比準価額の割合が高くなるから、会社を複数持っている場合には、その合併を行い、会社規模を拡大することを勧めていたものまであった。今後は、利益金額を操作しても類似業種比準価額に与える影響が限られてくるから、こうした相続対策の重要性は低下していくものと思われる。

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