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事業承継・相続とタワーマンション節税

最近、高くなった相続税を節約するためにタワーマンション節税が広がっている。この仕組みは、スタイルアクトという不動産仲介会社の沖有人社長が提唱したものだが、そのメリットはどこにあるのか。これをどう事業承継や相続に使っていけるのかについて考察していこう。

■1.タワーマンション節税とは

タワーマンション節税とは、現金でタワーマンションを購入し、時価と相続税評価額の差を利用して、相続税の節税を図る仕組みである。

こんなことを言っても、実感がわかないだろうから、具体例を用いて、どれぐらい節税が可能になるのかをお見せしよう。
今、ここに現金で3億円を持っている80歳の男性がいたとしよう。この方の家族は、妻と二人の子どもだ。

第1のケース

この男性が、相続税対策を何も行わず、3億円の現金をもったまま亡くなったという設定だ。
この場合の、基礎控除額は、3000万円+600万円×3=4800万円だ。相続税評価額の合計は、3億円から4800万円をひいた2億5200万円となる。
これを妻が2分の1の1億2600万円。子どもがそれぞれ、6300万円ずつ相続する。
妻の相続税は、1億2600万円×40%-1700万円=3340万円となるが、配偶者控除があるので、0となる。
子どもは、6300万円×30%-700万円=1190万円だ。子どもは二人いるので、合計で2380万円の相続税を負担することになる。

第2のケース

この男性がタワーマンション節税を聞きつけて、時価8500万円のタワーマンションを3個購入してから、亡くなったケースだ。タワーマンションの購入に当たっては、仲介手数料、修繕積立金、登記費用等の諸経費がかかるから、1戸当たり400~500万円かかったと仮定しよう。合計で1300万円の諸経費がかかったので、現金は3億円―8500万円×3-1300万円=3200万円に減っている。
タワーマンション1戸当たりの相続税評価額は1800万円(何で8500万円で買ったマンションの相続税がこんなに下がるかについては、次の2で説明する)だから、相続財産の合計額は、1800万円×3+3200万円=8600万円。

この場合も基礎控除額4800万円は同じだから、相続税評価額の合計は、8600万円―4800万円=3600万円。
妻が2分の1の1800万円、子どもが各900万円を相続する。妻の相続税は、1800万円×15%-50万円=220万円。ただし、この場合も配偶者控除があるので、0となる。子どもは、900万円×10%=90万円だ。
従って、相続税の合計は90万円×2=180万円。
第1のケースと比べてみれば、相続税は2380万円から180万円へと、なんと2200万円も減ったのだ。
こうして、相続税の節税をするのが、タワーマンション節税である。

 

■2.タワーマンション節税が可能となる理由

なぜ、こんな大きな節税ができるのか。皆さんが疑問に思って当然だ。
その答えは、タワーマンションの相続税評価の仕組みにある。
タワーマンションの相続税評価額は、土地部分と建物部分とから成り立っている。土地部分は路線価により、建物価格は固定資産税評価額により計算される。
マンションが区分所有権になっていることは、皆さんご存知のことと思うが、100戸のマンションなら、マンション全体の土地と建物の価格が100等分にされている。同じ土地の上のマンションなら、高層のマンションほど部屋がたくさんできるから、割り算の分母が大きくなり土地の価格が安くなってくる。建物については、そうとも言えないが、それでも共用部分の負担は部屋数が多いほど軽くなる。
だから、低層マンションより、高層マンション、すなわち、タワーマンションの方が有利になるのである。1の設例のマンションは、マンション全体の土地の路線価が55億円。そこに500戸のタワーマンションが建っているので、1戸当たりの土地の値段は1100万円となっていた。建物の固定資産税評価額も、ほぼ同じ1100万円だった。

これだけなら、マンションの相続税評価額は2200万円となるはずだが、マンションを賃貸にだすことで、土地は貸家建付地として扱われ、さらに評価額が10%ほど削減された。建物は貸家の評価となるので、さらに30%削減された、これによって、相続税評価額が1800万円となったのである。
なお、あまりにタワーマンション節税が広がったため、タワーマンションの建物評価額が変更されることになった。タワーマンションは、高い部屋ほど眺望がよいため、時価が高くなる傾向にあることを考慮して、階層差をつけることになったのである。

その内容は、20階以上で、2017年度以降に契約し、2018年度以降に竣工するマンションについて、階層差を0.256%つけるということだ。この数字から見るように、あまり大きな修正ではなく、50階で13%の差でしかない。実際の時価のかい離の方が大きいぐらいで、タワーマンション節税の有効性にはほとんど影響がなかった。
この結果、タワーマンション節税の仕組みは、基本的に温存されることになった。

 

■3.タワーマンション節税のメリットとリスク

第1に考えなければいけないのは、購入時の諸経費400万円がカバーできるかである。

しかし、タワーマンション節税は、賃貸に出すことを前提としている。賃貸に出せば賃料収入が得られる。
1で例として使った時価8500万円のマンションの場合、賃貸に出せば、年間約250万円の収入(固定資産税、賃貸管理費、管理費、修繕積立金控除後)を得られる。
購入時の諸経費400万円は、1年半程度で回収できるという計算である。
したがって、購入のコストについては、心配するに及ばないであろう。

第2のリスクは、相続時に税制が変わっているというリスク。

タワーマンションの相続税の評価が時価となってしまえば、節税ができなくなるから心配である。
しかし、土地を路線価、建物を固定資産税評価額で評価するというやり方は、昭和30年以来一度も変わったことがないので、そこまで心配することはないだろう。もし、すべて時価にするということになれば、多くの相続人に甚大な影響が及び、反対運動が起きることは自明だから、そんな政策を国会が通すはずもない。

第3のリスクは、相続後に、購入した時に近い価格でタワーマンションを売却できるかどうかだ。

1の例での相続税の節税額が2200万円。物件を3戸買ったという想定だから、1戸あたり800万円以上下落しているとかえって損をすることになってしまう。
しかし、ここでも賃料収入を忘れてはならない。毎年250万円程度の賃料がはいるのだから、10年たてば2500万円の貯金ができている。ここから、取得時の諸経費400万円をひいても2100万円の貯金がある。つまり、2100万円価格が下落しても、トントンということだ。
つまり、ある程度時間がたってしまえば、売却価格下落のリスクにも、十分対応できるようになるのである。

以上見てきたことから、タワーマンション節税のリスクは、十分管理できるものであることがわかる。

 

■4.タワーマンション節税の使い方

上記の通り、タワーマンション節税には多大なるメリットがあること、リスクはこのメリット以下であり、十分管理可能なものであることが確認できた。

では、どう使ったらよいだろうか。
うまく使うには、タワーマンションの選定が鍵になることは言うまでもない。いい物件でなければ、すべてが絵にかいた餅になる。
具体的に、どういうタワーマンションがふさわしいかと言えば、それは、以下の3つの要件を満たす物件である。

➀相続税評価額が時価に比べて低いこと
➁高く安定的な賃料が期待できること
➂5年後、10年後に大きな価格下落なく売却できること

こうした物件を吟味するには、やはりプロに任せるしかなく、適切な仲介業者の選定が鍵になると考える。
ただし、プロはプロで自分の商売のために、いいところだけを強調してくる心配がある。
やはり、自分自身で物件のメリットとリスクを見極め、慎重な判断を行っていくことが望ましい。

©2017 青山東京法律事務所.
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